Shopifyが10月1日、AIに店を作らせる新しい画面「Canvas」を発表した。 相棒役のAIエージェント「Sidekick」が店のテーマファイルを直接書き換え、店全体を見渡しながら仕上げていく。
うたい文句は「20分で完全なカスタムストア」。
背筋が冷えるのは海外のお客さんにも売る小さなネットショップの店主だろう。 初期提供では翻訳も複数地域への販売機能も対象外とされる。 20分で店の正面を塗り替えても、英語ページと越境販売の設定は一歩も進まない。
20分の時計はいったい何を測っているのか?
AIが触るのは店の骨組み
従来の編集画面はテーマの部品を並べ替える方式だった。 大きく見た目を変えたいならコードを書くか開発者に頼むしかなかった。
新画面では店全体を一望し、気になるページへ拡大して手を入れられる。 AIの書き換えは画面へすぐ反映され、チャットで頼むことも自分で直接いじることもできる。
画面には実際のコードを動かした店がそのまま映る。 アニメーションも商品の並びも画面幅ごとの見え方も確かめられる。
AIが手を入れる範囲は文章欄を越えて店の柱と梁まで広がった。
外注の見積もりに青ざめてきた個人の開業組にとってありがたい道具になる。 私はこの新画面を素直に便利だと思う。
同社の発表によると、Sidekickは今年上半期だけでテーマを2,500万回超も編集した。 外部の検証を経ていない自己申告とはいえ、思いつきで足した新機能と呼ぶには実績を積みすぎている。
デザイナーへの依頼はAIでたたき台を作ってから出す。 半年後にはそんな順番で動く店主が珍しくなくなるだろう。
20分の横に並ぶ対象外の列
20分という数字はShopify社内の人の発言から来ている。 一般の店主が測った平均時間ではないし、開業届まで片づく時間でもない。
しかも初期の対象外リストが長い。
外部の会社が作ったテーマも、アプリのブロックや拡張も、新画面ではまだ扱えない。 複数の国や地域に売るマーケット機能と翻訳も対象外で、テーマの更新までもが外されている。
おまけに使えるのはパソコンだけ。 同社自身も新画面を未完成と認め、既存の編集画面は当面残ると明記している。
未完成を自分の口で言える会社の正直さは買いたい。
開かれたのは自社テーマの奥のファイルまでだ。 外部テーマやアプリといった他社の部品の扉は閉じたままである。 純正の部品だけで組んだ店ほど得をする形には、少し苦い味がする。
店の正面は塗れても、裏口の鍵は別の束にぶら下がったままだ。
レビューや在庫連携をアプリで回している店はもっと厄介になる。 AIに任せた途端、アプリの表示や連携がおかしくなっていないか確かめる仕事が増えるからだ。
越境の店はまだ旧画面
英語と日本語のページを並べて売る店にとって、翻訳とマーケット機能の除外は痛い。 デザインをAIで刷新しても、言語ごと地域ごとの表示はAIの手の外に残る。
海外向けの店はしばらく新画面と旧画面の二刀流になるはずだ。
日本で使える日も読めない。 同社が示した展開時期は「今後数日」で、国ごとの開始日も対象プランも書かれていない。
日本向けサイトはSidekickを管理画面に標準搭載とうたっている。 Canvasが同じ形で日本の店へ届くと断言できる材料はまだない。
あなたの管理画面に現れる日を、今のところShopifyしか知らない。
Wixと違う掘り方
会話でサイトを作るAIならWixも出している。 ネットショップや決済の機能と組み合わせ、始めやすさで勝負するサービスである。
Canvasは商品とテーマと売り場がつながった販売基盤の中を深く掘る。 店を作る道具として見ると、すでにShopifyで売っている人ほど恩恵が大きい。
では今すぐ飛びつくべきか?
日本語だけで純正テーマの店を回しているなら、画面に出た日に触って損はない。 外部テーマとアプリと翻訳で店を組んでいるなら、旧画面のままで十分に戦える。
20分で店の正面は作れる。 商品説明も返品の決まりも法令表示も、決める手は店主の側に残る。 返品表示と決済導線を点検する時間はAIの時計の外にあって、店主の時計だけが刻んでいる。


